後編
どうやって職場に適応していくのか?

4 適応していくとは?

さて、ここでこれを読んでいる方に考えてみていただきたいのです。

「その場の状況にふさわしい行動」をすることが苦手で、
過去に職場不適応を起こした人を適応させるために
どのような訓練をするべきでしょうか。

職場でありがちな発想は、
厳しく躾けて「その場の状況にふさわしい行動」ができるように叩き込む
です。
その人をいわば「改造」して、皆と同じにしようとするのです。

しかしそんなことはできないのです。

なぜ「改造」することができないか

発達障害はその本人の脳の独特な構造によるものです。それは「劣っている」ということではなく、脳の各部位のバランスがうまく取れない状態、いわば「ずれ」が生じた状態である、と表現する研究者もいます。

生育していくと、その脳の状態は固定されたものになっています。

それを作り変えて、今できない感じ方をできるようにしたり、苦手な思考を得意にする、というようなことはできないのです。

その人をいわば「改造」しようと試みることは、たとえば手が欠損している人に対して、「手を生やしてこい」と命令するのと同じぐらい残酷なことです。そんなことは絶対にしてはいけないのです。

「君の個性を私は認めない。私が作り変えるのだ。」というような接し方をされ、自力で変えようのないものを変えるように迫られたら、本人の情緒はどうなっていくでしょうか。

自己を肯定するところから始めないと情緒を安定させることができない、という大原則をご理解いただきたいのです。

つまり、その人の特性は変えようがないということを肯定するところから入る。
いわば「変わり者でいいじゃないですか」という発想から始まります。

もし肯定から始めないなら、適応するという行為は本人にとって、絶え間のない自己否定の連続になってしまうのです。
本人が持っている本来の感じ方や考え方を作り変えることはできない
ということをまずしっかり確認したいと思います。

※これを読んでいる職場の方が、もし対応に迷っていたら、以下のような本を参考にしてみてください。
「もし部下が発達障害だったら」 (ディスカヴァー携書)
著者:佐藤 恵美 出版社: ディスカヴァー・トゥエンティワン ¥1,100
他にも同種の本が出版されています。

5 不適応とは何か

さて、適応できていないとはどういう状況でしょうか?
現実に起こっていることを確認してみましょう。

まず
本人が持っている本来の感じ方や考え方を作り変えることはできない。
しかし
②職場環境は本人にさまざまなことを期待してくる。
そこで
③本人が自分なりに感じたことを元に、自分なりに考えて行動すると、「違う」と否定されて、怒られる。

①に関しては本人にもどうにも変えようがないことなので、
ここで注目すべきは
③「自分なりに考えて行動する」という部分です。

もちろん「君が自分なりの考えで行動すると変なことばかりする」とあなたが言われたとしたら、悲しいですよね。

「職場の皆さんの役に立とうとして自分なりに考えて仕事しているのに・・」
「自分なりの感じ方、考え方が結局不正解ばかりにたどりつくのだとしたら、いったいどうすればいいんだ・・」
そんな絶望的な気持ちになってしまうかもしれません。

ここであらためて確認したいのですが、そんな自分を否定する必要はなく、肯定してほしいのです。

世の中のしくみは多数派に合わせて作られています。
現在は、発達障害ではない人、いわゆる定型発達の人が多数派なので、そういう人たちに合わせて、世の中のしくみができているのです。

発達障害傾向のあなたがその中で生きにくいのは、
あなたが「間違っている」わけではなく、多数派と合わない、というだけです。

しかし、職場は多数派が居るところ。
仕事の仕組みは多数派に合わせて出来上がっています。
そこになんとか合わせていかなければなりませんね。

「自分なり」のやり方ではダメだとはっきりしました。

それではどうやって仕事に「適応」していくのか。
作戦を練る必要があります。

6 適応のプロセス

ここまでの話を整理してみましょう。

この④と⑤が、就職成功・職場適応への道で、わたしたち就労移行支援事業所がお手伝いしていることです。

こうして言葉で書くと、この流れをご納得いただけると思うのですが、実際にはなかなか簡単な作業ではありません。

なぜかと言うと「周囲に合わせていく」という行為が、本人にとっては、
「わけの分からないことを押し付けられている」ということであり続けるからです。自分の感性に全くフィットしない行為なのですから。

その違和感のある状態を本人が受け入れ続けるためにも、情緒の安定が大事なのです。

そうやって適応に成功すれば、本人にとって生きやすい環境が手に入るのです。

周囲に合わせていくスキル」は、誤解を恐れずに言えば、小手先の技術です。
流行りの言葉で言えば「ライフハック」というもの。

繰り返しますが、自分を「改造」することはできない。
自分を変えるのではなくて、「生活術」「仕事術」をうまく使って乗り切ろう、という考え方です。

自分の根本的な部分には自信を持っていればいいと思うのです。「しょうがないなあ、多数派の君たちに合わせてあげるよ」ぐらいに思っていればいいのです。

この成功例が
「発達障害の僕が『食える人』に変わった すごい仕事術」
(著者:借金玉 出版社:KADOKAWA)
という本に見事に書かれていますので、お読みになることをお勧めします。

改めて繰り返しますが、自分を作り変えることはできません。
目指すべきことは
「自己変革」
ではなく、
「仕事術」「生活術」の獲得です。
不可能な自己変革をしようとして、どんなにたくさんの人が病んでいっていることか。

「『仕事術』『生活術』って具体的に、どうやるの?わからないよー。」
と思っているあなた。
私たち就労移行支援事業所がサポートします。

私たちは、その人に合わせた「仕事術」「生活術」を提案し続けていき、身に着けてもらうべく伴走していくのです。

後編のまとめ
ご相談受け付けています。

ポンテはさまざまな実際の仕事の現場で就労支援をしてきましたので、どんな仕事の場面でつまずきやすいか、知っています。

ポンテは函館で5年の経験を経て、この地での就職成功・職場適応のノウハウを積み上げてきました。

困っている皆さんを、どのポイントに注意して導いていけばいいのか、かなりわかってきました。多くの就職成功卒業生がポンテから巣立って行っています。

悩んでいる皆さんからのご相談を、いつでも無料でお受けしています。

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発達障害の主な特徴

主な特徴
自閉症
  • 人との関係づくりが不得意。
  • 「ほどよい具合に調整する」というようなことが不得意。
  • こだわりが強い。
ADHD
(注意欠如多動性障害)
  • 注意力が持続しにくい。
  • 衝動的な行動をおさえられないことがある。

発達障害 用語解説

定義
発達障害 自閉症・注意欠如多動性障害・学習障害の3つを合わせた総称。
アスペルガー症候群 知的障害をともなわない自閉症。
高機能自閉症 知的障害をともなわない自閉症。
二次障害 発達障害から生じる心理的な傷つきが積み重なり、精神的不調へと発展してしまうこと。

発達障害の研究は、1940年代にアメリカの精神科医レオ・カナーが「知的障害をともなう自閉症」を研究したところから始まっています。

そのため1970年代までは「自閉症」というと必ず知的障害を伴うもの、と思われていたのです。
1970年代になって、「知的障害をともなわない自閉症」があるということが、だんだん認められるようになってきました。

誰よりも先駆けてその研究をしていたのが、オーストリアの小児科医ハンス・アスペルガー。
彼の名にちなんで「知的障害をともなわない自閉症」のことを「アスペルガー症候群」と呼ぶようになったのです。

高機能自閉症とアスペルガー症候群は医学的に厳密に言うと違うものだそうですが、我々のような支援する立場からは実質的に同じであることから、厳密に区別して考えてはいません。

注意欠如多動性障害はADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)の日本語訳です。

Deficitという単語を「欠如」と訳していますが、実は「不足」という意味合いの言葉です。「注意力が不足しがち」と言っているわけですね。

「多動」傾向は大人になると少なくなるようですが、衝動性を時々コントロールできなくなって、悩んでいる人は多いようです。

いずれの障害も困った時の対処法がさまざまに発展してきたので、生きづらさを軽減しながら、可能性を広げていく人たちが増えてきています。

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